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設計者なら誰でも一度は抱いたことのある不安だ。
昔は試作品を作って実際に壊してみるしかなかった。それが今は、PCの画面の中で荷重をかけて答えが出る。
SolidWorks Simulationを使えば、FEA(有限要素法)による強度計算を3Dモデルから直接実行できる。
試作前に弱点を発見できるから、設計の精度と自信が同時に上がる。
この記事では、スタティック解析の手順から結果の読み方・よくある失敗まで現場目線でまとめた。
1. SolidWorks Simulationとは / 使えるエディション
SolidWorks SimulationはFEA(Finite Element Analysis:有限要素法)を使った構造解析ツールだ。部品・アセンブリに荷重と拘束を設定すると、変形量・応力分布・安全率をPC上で計算できる。3Dモデルに直接解析できるため、別途CAEソフトを使わずに済む。
| 解析種類 | 内容 | 使えるエディション |
|---|---|---|
| スタティック解析 | 静的荷重での変形・応力計算 | Premium / Simulation Standard以上 |
| 疲労解析 | 繰り返し荷重での破損予測 | Simulation Professional以上 |
| 熱解析 | 温度分布・熱応力の計算 | Simulation Standard以上 |
| 座屈解析 | 圧縮荷重での座屈評価 | Simulation Standard以上 |
| モーション解析 | 機構の動力学解析 | Simulation Professional以上 |
💡 まず「スタティック解析」から始める
静的荷重での強度確認は最も基本的で、実務でも使用頻度が高い。SolidWorks Premiumライセンスがあれば追加費用なしで使い始められる。まずここから試してほしい。
2. スタティック解析 6ステップ
Step 1:Simulationアドインを有効化する
- ツール → アドイン を開く
- 「SolidWorks Simulation」にチェックを入れる
- OKで確定 → メニューバーに「Simulation」タブが追加される
Step 2:解析スタディを作成する
- Simulation → 新しいスタディ をクリック
- 「スタティック」を選択してOK
- Simulationツリーが表示される
Step 3:マテリアルを設定する
- フィーチャーマネージャーのパーツを右クリック
- 「マテリアルの適用」を選択
- 材質を選択して適用(例:合金鋼 AISI 1060)
⚠️ マテリアル設定を絶対に忘れない
マテリアルが未設定のまま解析すると意味のない数値が出る。または解析がエラーになる。解析前に必ず確認すること。
Step 4:境界条件を設定する(最重要)
- 固定拘束:Simulation → 拘束 → 固定ジオメトリ
取付面・ボルト穴など「実際に動かない場所」を選択する - 荷重:Simulation → 外部荷重 → 力
力がかかる面を選択し、方向と大きさをN(ニュートン)で入力する
Step 5:メッシュを作成して解析実行する
- Simulation → メッシュを作成(デフォルト設定でまず試す)
- Simulation → 解析を実行
- 計算完了まで待つ(部品サイズにより数秒〜数分)
Step 6:結果を確認する
Simulationツリーの「結果」フォルダに以下が自動生成される。
- 応力(von Mises):材料の降伏応力と比較する
- 変位:部品がどれだけ変形するかをmm単位で確認
- 安全率:1.0以上で計算上は破損しない(設計目標は1.5〜3.0)
3. 境界条件の考え方(結果を左右する最重要設定)
解析の精度を決めるのは、メッシュの細かさでも材料の正確さでもなく、境界条件の設定が現実をどれだけ再現できているかだ。ここが雑だと、どんなに計算しても現実とかけ離れた数値が出る。
| 設定項目 | 考え方・注意点 |
|---|---|
| 固定拘束の場所 | ボルト締結面・圧入面・溶接面など「実際に動かない場所」だけを選ぶ。過剰に固定すると剛性が高く出すぎる |
| 荷重の方向・大きさ | 実際の使用状態を再現する。重力方向・荷重点・荷重の分散を正確に設定する |
| 対称境界条件 | 左右対称モデルは半分だけ解析することで計算時間を半減できる |
| 接触条件(複数部品) | 部品間の接触を「結合・滑り・分離」から適切に選ぶ。デフォルトの「結合」だけでは不十分な場合がある |
📌 手順・結果の見方・境界条件・失敗対処をPDF1枚にまとめました
4. 結果の見方と判断基準
| 確認項目 | 意味 | 判断基準 |
|---|---|---|
| von Mises応力 | 材料に加わる相当応力 | 材料の降伏応力より低ければOK |
| 変位 | 部品がどれだけ変形するか | 機能上問題ない変形量か確認する |
| 安全率 | 降伏応力 ÷ 最大応力 | 1.0以上で計算上破損なし。設計目標は1.5〜3.0 |
| 応力特異点 | 特定の点に応力が集中する現象 | フィレットを追加するか、メッシュを細かくして再確認 |
💡 安全率の設計目標について
安全率1.5〜3.0という数字は、材料のバラつき・加工精度・実際の取付誤差・経年劣化などを考慮したマージンだ。計算上1.1でもギリギリOKとは言いにくい。「計算が正しくても現実は違う」という謙虚さが、設計の現場では大事だと思っている。
5. 【実話】「安全率1.1です」で会議が凍りついた日
若手の頃にやってしまった話だ。
強度検討の会議で、自分が担当したブラケットの解析結果を発表した。グラフはきれいなカラーマップで、数字もちゃんと計算している。「von Mises応力:〇〇MPa、安全率:1.1です」と言った瞬間、部屋の空気が変わった。
ベテランの先輩が静かに言った。「それ、1.1ってことは10%しか余裕がないってことだよな。境界条件、ちゃんと確認した?」
正直に言うと、固定拘束の設定が「なんとなく」だった。ボルト締結面を固定したつもりが、実際の取付条件と微妙にズレていた。先輩に指摘されて再設定したら、安全率が0.8まで下がった。計算上は「破損する」という結果だ。
設計を大幅に見直すことになったが、試作前に発見できたのは本当によかった。あのまま試作品を作っていたら——と今でも思う。
Simulationは「数字が出る」ツールだ。でも数字を正しく読むには、境界条件を正しく設定する知識が必要だ。ツールを使いこなすと使われるの境界線は、そこにある。
6. よくある失敗と対処法
| 失敗・症状 | 原因 | 対処法 |
|---|---|---|
| 解析が収束しない | 拘束が不十分で剛体移動が発生 | 固定拘束を追加して全自由度を拘束する |
| 応力が異常に高い | 応力特異点(形状の角への集中) | フィレットを追加するかメッシュを細かくして再確認 |
| 計算が重くて終わらない | メッシュが細かすぎる | メッシュサイズを粗くして再実行、必要な箇所だけ細かくする |
| 結果が実測と大きく乖離する | 境界条件の設定ミス | 固定面・荷重方向を実物の状態に合わせ直す |
| マテリアルが設定できない | 標準ライブラリにない材料 | カスタムマテリアルを手動入力する(ヤング率・降伏応力・密度が必須) |
7. Simulationを使う際の注意点
⚠️ 解析結果を過信しない
Simulationの結果はあくまで「理想的な条件での計算値」だ。材料のバラつき・加工精度・実際の取付状態・経年劣化は考慮されていない。設計の最終判断は、解析結果+経験+実測データを合わせて行うこと。
- 境界条件が現実とズレると結果も大きくズレる——設定の根拠を言語化しておく
- 安全率1.0ぎりぎりは実務では危険——1.5以上を設計目標にする
- 応力特異点(角部への集中)は現実の破損とは異なる場合がある
- メッシュを細かくすれば正確になるわけではない——適切な粗さがある
- 解析は「設計の確認ツール」であり「設計の代替」ではない
8. まとめ
SolidWorks Simulationは「この設計で本当に大丈夫か?」という問いに、試作前に数値で答えてくれるツールだ。
- まずスタティック解析から——最も基本的で実務使用頻度が高い
- マテリアル設定は必須——未設定のまま解析しても意味がない
- 境界条件が9割——固定面と荷重を現実に忠実に設定する
- 安全率の設計目標は1.5〜3.0——1.0ぎりぎりは危険
- 解析結果は過信しない——経験と実測データと合わせて判断する
9. チートシートPDFダウンロード
この記事の内容をA4印刷用PDFにまとめました。解析手順・結果の見方・境界条件の考え方・失敗対処表が1枚に凝縮されています。
📄 SolidWorks Simulation FEA 完全ガイド(印刷用PDF)
解析手順6ステップ / 結果の見方 / 境界条件の考え方 / 失敗対処表 / 無料ダウンロード
STEP UP
Simulationを正しく使えるようになるには、
「設計の土台」が必要です
Simulationで正しい結果を出すには、正しい境界条件が必要だ。
正しい境界条件を設定するには、実際の荷重状態・固定状態を理解している設計力が必要だ。
「解析ソフトが使える」と「解析を正しく読める」は全く別の話。
後者は、設計の基礎——モデリング・アセンブリ・機構の考え方——の積み上げで初めて身につく。
Udemyには現役エンジニア監修のSolidWorksコースがあり、
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CADHACK — 設計者のAI・CAD効率化メディア
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